1. HOME
  2. 今宮便り
  3. ことのは
  4. 東京防災 令和8年6月号より

東京防災 令和8年6月号より


土石流災害から5年、熱海から「ありがとうございます」
の感謝を込めて

                            ライター/谷口素子
令和三年七月三日、一〇時三〇分頃、静岡県熱海市伊豆山の逢初川で土石流が発生しました。逢初川の上流部、標高約三九〇m地点で崩壊が起こり、土石流は下流へと流れ、甚大な被害をもたらしました。
令和五年七月三日に熱海市から発表された「熱海市伊豆山地区土砂災害の被害と対応について(総括情報)」によると、亡くなられた方は二八名(うち一名は災害関連死)、最後の行方不明者が発見されたのは令和五年二月九日。発生から一年七カ月後のことでした。
災害が起こった当時、私は東京でそのニュースを知りました。熱海は私の故郷です。心配しながら電話をかけ、メールを打ち、情報収集をしながら、ただ落ち着かない時間を過ごしていたことを覚えています。
市内にいた人に話を聞くと、サイレンが鳴り響き、緊急車両がひっきりなしに行き交う、これまでに見たことのない光景だったそうです。市民は「早く行方不明の方を見つけてあげてほしい」と願う一方で、懸命に捜索活動をしてくださる隊員の方々に「ありがとうございます」と、手を合わせる思いで感謝していたといいます。
それから五年が経ちました。家の軒先に「感謝 熱海のご支援ありがとうございます 市民一同」と書かれた横断幕を掲げ、救助に向かう車両に感謝を伝えたのが魚屋「藤元」の藤間弥生さんです。
「当時はとにかく暑くて、それでも伊豆山のために働いてくださっている消防、警察、自衛隊の方々に、”ありがとうございます”の気持ちを伝えたくて、横断幕を出しました」。ただ。感謝を伝えたい気持ちは強くあったものの、そこには少し迷いもあったそうです。
「私が市民の代表といっていいのだろうか」。しかし、横断幕を見た方々から寄せられたのは「感謝を伝えてくれてありがとう」という言葉ばかりだったそうです。
今年もまた、あの日がやって来ます。熱海の今宮神社では、「花結び」という確しの一環として、神事や巫女舞による「祈りの夕ベ」が行われます。水のパレットに花を浮かべ、懐かしいあの人を思うひとときです。
伊豆山で亡くなった方のことを心穏やかに思うそんなイベントです。
藤間さんは「今でも、あのときの感謝の気持ちは忘れていません。本当に暑かった。暑い中、ご尽力いただいたからこそ、行方不明だった方々がご家族のもとに帰ることができました。本当にありがとうございました」。
私も、熱海市民も、藤間さんと同じ思いです。東京消防庁の皆さま、本当にありがとうございました、五年経った今でも、あのとき、助けていただいたことを忘れずいつも感謝しています。


東京消防の「徒然おもしろウォッチング」令和8年6月号に取り上げていただきました。
ライターは、熱海市出身の谷口素子さんで故郷を想う温かな繋がりを感じます。
素敵な記事をありがとうございました。

関連記事

ことのは暦
2026年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930