1. HOME
  2. 今宮便り
  3. ことのは
  4. 蝉の声を待ちながら

蝉の声を待ちながら

今夏の宮の杜は、蝉の声がどこか控えめです。
例年なら、夕方の始まりの頃まで、
「ここに命あり」と誇るように、
精いっぱい鳴いていたはずなのに。

そういえば、木の幹にしがみつく抜け殻も、
この夏はあまり見かけません。
異常気象の影響でしょうか、
それとも、自然界の静かな帳尻合わせなのか。

けれど、隣の田方では苗が順調に育ち、
青さの深まりが、野を穏やかに満たしていた。
光と風に撫でられながら、
命たちはまだ、あきらめていないようだった。

どうかこのまま、何事も起こらず、
秋には、豊かさと安堵の実りがありますように。
そんな祈りだけが、手のひらに残った。
私はそれを、そっと杜に置いて帰る。

関連記事

ことのは暦
2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031