秋の香につつまれて
   今宮神社の木犀は、今年も律儀に季節を忘れず、
四面八方(よもやも)へと金色の香りを放っています。
風にのって漂うその甘やかな香気は、どこか懐かしくて、
幼いころにふと感じた「秋の気配」を思い出させるようです。
木の元にたたずみ、そっと目を閉じると、
芳香は鼻こうをくすぐりながら、心の奥までやわらかく染みていきます。
その瞬間、金木犀の香りが光を纏い、
まるで見えない粒子がきらきらと舞いながら、
世界全体をやさしく包み込むような幻想を感じます。
ほんのひとときの季節の魔法。
それでも、この香りを胸いっぱいに吸い込むたび、
「今年もちゃんと巡ってきたんだな」と、心がほどけていくのです。

束の間の秋の喜びを、どうぞ今宮神社で味わってください。
木犀の香りとともに、静かな幸福があなたを迎えてくれるはずです。
    






