1. HOME
  2. 今宮便り
  3. ことのは
  4. 薔薇の記憶、水に映して

薔薇の記憶、水に映して

真紅の薔薇は、わたしにとってただの花ではありません。
それは永遠に触れることのできない憧れであり、
心の奥で燃え続ける、手のひらより少し大きな焔のようなものです。

幼い頃、オスカル様に出逢ってしまいました。
あの、まばゆく咲き誇る軍服と金髪。夜露を孕んだまなざし。
強さと儚さが背中合わせになった美しさ。
何かがわたしの中で音を立てて変わった、あの日の記憶。

「バラは命の証なのよ」
そう誰かが耳元で囁いたような気がして、手元の薔薇を見つめてしまう。

手水舎を整えながら、鼻歌のように歌が漏れました。
♪ああ 愛あればこそ〜 生きる喜び〜〜(by 宝塚)

この水をくぐってゆく人々に、ほんのひととき、花の記憶が宿りますように。
そしていつか、誰かの心に、ふと薔薇が咲きますように。
それがわたしの、ささやかな祈りです。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。