紫陽花と118-2

雨音は、どこか遠い記憶を辿るような旋律で降りてきました。
ショパンかしら、と思ったけれど、もう少し静かで、やさしい。
もしかすると、ブラームスの間奏曲118-2。
あの、揺らぐような切なさと、胸の奥を撫でる温かさ。
今日の雨には、そんな旋律がよく似合う気がします。
今朝の杜は、雨に包まれてふだんよりもしっとりとしています。
木々の葉は雨粒を弾きながらもどこか嬉しげで、
花たちは、雨のひとしずくを宝石のようにまといながら
静かに、でも誇らしげに咲いています。
花手水は、アジサイに。
さまざまな色を持ちながらも、どれひとつとして自己主張しないその花は、
まるで雨そのもののよう。
ふわりと香る空気のなかに、やさしい記憶が混じっているようで
立ち止まりたくなる朝でした。
雨が嫌いだったはずなのに、
こんな日は、嫌いになる理由なんてどこにも見つかりません。