幸せの白フクロウ

夜の帳が静かに降りてくると、境内の杜にふわりと響く声があります。
それは、誰かの記憶の奥にひそんでいるような音。
優しくて、でも少しだけ胸をきゅっとさせる、不思議な鳴き声です。
姿を見せることは、ほとんどありません。
でも私たちは知っています。あれは、白いフクロウ。
「見る者に幸せをもたらす」と古くから言われてきた、森の精のような存在です。
きっと、神さまのお使いなのでしょう。
今日もどこかの枝の上で、静かに夜の訪れを見つめながら、
誰かの悲しみに寄り添い、誰かの願いごとを聞いているのかもしれません。
日中の喧騒がすっかり消えた頃、
葉擦れの音とともに聞こえてくるその鳴き声は、
この世とあちらの世界をつなぐ合図のようにも感じられます。
姿が見えなくてもいい。
ただその声が聴こえるだけで、「今日もちゃんと世界は続いている」と思えるのです。
境内の夜には、ときどきこうした静かな奇跡がひそんでいます。
もしもあなたが、そっと耳を澄ますことができたなら、
きっとその声を拾えるはず。
それはきっと、あなたの心にそっと降りる、幸福の羽音なのです。




