切ない春
4月のやわらかな風に乗って、境内のイチョウの雄花はそっと外の世界へと旅立ちます。
目指すのは、お隣の小学校の校庭に佇む雌花たち。毎年、目には見えぬ春の営みが、静かに交わされてきました。
けれど今年は、少し事情が違うようです。
校庭のイチョウは大きく枝を落とされ、雌花の姿は見当たりません。
今宮のイチョウたちにとっては、少し切ない春…行き場をなくした雄花が、風の中にたゆたっています。
それでもなお、イチョウは変わらずに。
やさしく、そしてたくましく、命をつないでゆこうとしています。
新しい芽吹きに満ちた杜は、今年もまた、静かに、そして確かに萌えています。









